家の前で倒れている男に餌付けしてみた結果(仮)
「はい、お前らいい加減にしろよ〜。もう開店の時間だ!さっさと心ちゃんも柚鈴ちゃんも着替えてきて」
パンパンと手を叩き、今日も店長らしく仕切るきーさんにあたしは渋々「はぁ〜い」とやる気の無い返事を出す。
心とはいうと、嫌な顔1つせず「はいっ」と大きく頷いていた。
店の中の狭い従業員用の部屋に入り、これまた狭い自分の名前が記されたロッカーに無造作にバックを置く。
用意といってもただこの私服にこの店指定の紺のエプロンを身に付けるだけ。
エプロンは別に可愛くもないしそこまでダサくもない。
ただの紺のエプロン。
装飾品なんてないし、柄だってない。
あるとしたら自分の名字が記されたネームプレートをバッチのように胸元に付けるだけ。
「よし…これでいっか」
ロッカーを締めてホールに出ようと扉を開くとちょうど心の姿が…。
心は幸せそうな表情をしながらあたしに近づいてくる。
「柚鈴!私ね今すっごい柚鈴に感謝してるっ私絶対、紀伊さんを落として見せるからっ」
耳元でそんな宣言を恥ずかし気もなく言う心。
そんなこと言われたらねぇ…
「成功したら祝ってあげる」
そう言わずにはいられないでしょ?