家の前で倒れている男に餌付けしてみた結果(仮)
出来ればそこで働けたらいいんだけど…それは流石に図々しいしな。
昼間なこともあり、外にはいつも見るようなカラフルな髪型の奴等はいない。
まぁ、俺が夜型人間というものもあるがこんなにも居ないものか?
少し不審に思いながらも今はそんなことを考えたくはなくてその考えを振り落とす。
徐々に変わっていく景色を横目で見ながら向かえば、思っていたよりもあっさりとすぐに目的地にまで着いた。
木の扉をゆっくりと開ければ同時に鈴の音が聞こえてくる。
オシャレなアンティーク調の店内に「いらっしゃいませー」と何人かの声が響き、元気に接客している柚が目についた。
まだ柚は気づいてないみたいで、こっちにこない。
取り敢えず近くの空いていた席に腰を下ろし、メニューを眺める。
最初からいちごミルクを頼むつもりだけど何となく開いたそれ。
デザートなどが多くあり、食べてみたくはなったが、自分の財布の中身を思い出し思い止めた。
メニュー表を見ている振りをしながらこっそりと柚を見てみるが柚は仕事をしっかりとこなしていてとてもじゃないが話し掛けにくい。
柚に声をかけるのを諦めて店員を呼び出せば爽やかな笑顔を浮かべた男がやってきた。
「ご注文お決まりでしょうか?」
そのお決まりの言葉に簡潔に答える
「…いちごミルクで」
「いちごミルクですね。以上でよろしいですか?」
「はい」
…そう言ったはずなのに、まだ俺から視線を外さない店員を眉間に皺を寄せ、見る。
何だ?
他に注文するものなんてないんだけど?
気持ち悪いことだが暫く見つめ合い俺も店員も相手を見定めるように目を離さなかった。