家の前で倒れている男に餌付けしてみた結果(仮)


〈滝川未玖side〉


[これ以上、関わってくるな]


と冷たい目であたしを見た八尋の声が何度も何度も頭の中で再生される。


…初めて、だった。


あたしのことをあんなに冷たい目で見てくる人なんて今までいなくて不覚にも動けなくなってしまった。


そんなあたしの横を何事も無かったかのように通り過ぎる八尋。


無理矢理にでも戻って来て欲しかった。


もっとちゃんとあたしが思ってることを伝えたかった。


だけど、あたしの体は動いてくれなくて、通り過ぎる八尋を見ていることしか出来なかった。


徐々に瞳から涙が溢れてくる。


「〜っ、ふぇ、うぅ…」


込み上げてくる嗚咽を抑えようと手で顔を覆うけど、中々止まってくれなくて


情けないなと自分でも思う。


…そんな時聞こえた彼等がやって来たのを現す女の子達の黄色い声。


「…う、ふぇ…と、めなきゃ」


彼等が来る前にこの涙を止めなくちゃ、また心配かけてしまう。


…ここが人気が無いところでよかった。


深呼吸して息を整え、頬を伝っていた涙を制服の袖で拭う。


早くしないと、彼等はあたしの居場所なんてすぐ分かってしまうから。


「…未玖〜!!」


ほら…後ろを振り返ると4人の男があたしの方に駆け寄ってくる。


「…おはよ!」


いつもより少しぎこちなくなってしまった笑顔にどうか気づかないでと願いながら、今日も八尋がいないこの場所で笑った。


〈side END〉
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