家の前で倒れている男に餌付けしてみた結果(仮)
〈巳波八尋side〉
「…ん」
眠い目を擦りながら辺りを見回す。
…そういえば学校に来たんだっけとまだ上手く働かない脳で一秒間が空いてから思い出した。
手元にある端末を見てみると時刻は12時30分。
もうそろそろ4時限目が終わるころだろう。
座って寝ていたせいで節々が少し痛む。
そして、まだ眠り足りない体を無理矢理起こした。
思ってたより寝てたな。
込み上げてくる欠伸を噛み殺しながらまだ生徒達はいないであろう購買に向かう。
この学校は成績がいい奴は最低限、授業に出席すれば進級出来るが、成績が低い奴はちゃんと授業に出席しなければ進級が出来ない。
だから不良が集まると呼ばれている第二校舎だが、全く廊下には人気がない。
どうせ、アイツ等は屋上か使われていない音楽室で食うだろうし。
…めんどくさ。
何で俺が一々隠れるような真似しなくちゃいけないんだ。
ゆずに貸して貰った千円を無意識の内に握ってしまう。
考え事をしている間にいつの間にか購買のすぐそばまで来ていた。
「いらっしゃい」
いつもの購買のおばちゃんがにこりと笑う。
どれにしようか…と視線をパンに落とせば近くから聞いたことのあるような声がした。
「これ、新発売の苺と生クリームが入ってるパン。…こういうの八尋好きじゃねぇ?」
声がする方に視線を向ければやはり、予想していた人物で
「…夏」
ポロリと口から名前が出た。
「そうだよ〜、天海夏目くん〈Amami Natume〉よく覚えてたじゃねぇの」
へらへら、へらへら笑う夏はやはり何を考えているのか理解出来ない。