家の前で倒れている男に餌付けしてみた結果(仮)
「ん〜、食べさせてあげたいのは山々なんだけどね。あなた、病院行かなきゃ」
ほら、血出てるし。
他人事みたいに言うあたしだけど、所詮他人事だしね。
でも、こんな所で死なれちゃ困る。
死ぬんだったら、あたしのいない所で死んで下さいな。
「…びょう、いん」
男はポツリと呟いて、嫌々とでも言う様に、首を左右に振る。
え、何これ。
もしかして…
「…病院行きたくないの?」
「……」
コクリと今度は首を縦に振り、それまで前髪とパーカーのフードで隠れていた男のスミレ色の瞳があたしを映した。
どうしたものか…
目の前にいる男は何だか捨てられた猫を連想させた。
ただ、此方を何も言わずジッと見つめる。
「…〜っ!わかったよ、良いよあたしが手当てしてあげる」
白旗を挙げたのはあたし。
男に、左手を差し出す。
「何してるの?ほら、手を貸して」
ボーッとあたしの手を見てただけの男の右手を掴み、「行くよ」と言って、肩に寄りかからせる。
うぅ…重い。
まぁ、あれだ。
酔っ払った奴を支える時の体制。
思ってたよりも、男の身体は重く、下手したらこっちが潰されそう。