家の前で倒れている男に餌付けしてみた結果(仮)
好きだから、あたしだけの物になって欲しい
〈滝川未玖side〉
[アイツのことはもう忘れろ]
八尋と話が済んだ後、大河に言われた一言が何度も繰り返される。
忘れた方が楽になるんだ。
…ちゃんとわかってるのに、わかってるはずなのに、ふと思ってしまう。
__八尋は今何してるのかな?
麒麟のみんながいる時も、大河といる時も、心は“八尋の傍にいたい”と望んでる。
[好きだ…未玖]
大河にそう言われても何も反応しない心。
だけど、ズルいあたしは返事を先延ばしにして、みんなとも離れない。
麒麟のみんなといたい。
八尋の傍にいたい。
どちらも紛れも無いあたしの本心で
どちらか一方をとるなんて選択肢は最初から無かった。
だけど、だけど…。
あたしは八尋が、女の子と一緒に住んでると知ってなにを思った?
インターホンを鳴らして現れた女の子の顔はとても可愛く、白い肌に軽くウエーブがかった焦げ茶色の髪が良く似合っていて、あたしは“何で八尋がこんな子と住んでるの”と思ってしまった。
天使のような見た目をした女の子。
“八尋はあたしの物なのに”
気が付けばあたしの心の中にどす黒い感情が渦巻いた。