家の前で倒れている男に餌付けしてみた結果(仮)
「苦しいよ…」
ポツリと言った言葉はあなたには気付いてもらえない。
「どうした。…顔色が悪いぞ」
「大丈夫?保健室まで送ってあげるよ?」
「大丈夫ですか?風邪ですかね」
あたしには心配してくれる仲間がいる。
いっぱい、いっぱい居るのに…!
「ごめんね。…保健室行ってくる」
自分が嫌になる。
心配そうに見つめる彼等に
「一人で行ける。大丈夫だから」
ぎこちない笑顔を見せるしかない。
麒麟のみんなはあたしに何をくれた?
__いつでも帰れる居場所をくれた。
大河はあたしに何をくれた?
__あたしを好きだと言って辛い時傍にいてくれた。
…八尋はあたしに何をくれた?
__恋を教えてくれた。
切なさを教えてくれた。
愛しさを教えてくれた。
好きな人に名前を呼ばれる嬉しさを教えてくれた。
今までいた溜まり場からあたし1人、廊下に出る。
無理矢理作った笑顔をやめて、顔が歪む。
視界がぼやける。