家の前で倒れている男に餌付けしてみた結果(仮)
あ〜あ、綺麗な顔が勿体無い。
痕残らなければ良いんだけど…。
「…ごめん、ちょっと染みるかも」
ポンポンと、消毒液をコットンに染み込ませて、軽く叩く。
「…〜っ」
やっぱり、消毒液が染みて痛いのか綺麗な顔を歪ませた。
「そうだ!…あなたの名前って何?」
少し気不味い雰囲気を良くしようと話題を振る。
…話題って言っていいか分からないくらいの小さな話題だけど。
「…巳波、八尋」
巳波八尋君か、中々良い名前。
「あたしは神代柚鈴」
「…ゆず?」
「あ〜、うん。そう呼んでくれて構わないよ」
少し、吃驚した。
あんまり反応が無かったから、話すのが嫌いなのかと思ってた。
案外普通に話すんだね。
額に大きな絆創膏を貼り、他の擦り傷も消毒することができ、頭から出てると思ってた血は額から出たものだと知って、ほんのちょっと安堵の溜息をもらした。
「はい、これで完了!」
「……ありがと」
ボソボソと小さく巳波の口から出た感謝の言葉もちゃんとあたしの耳に入り、笑みが溢れる。
…感謝されたのっていつ振りだろ?
僻まれてばっかだったからなぁ。
学校での事を思い出す度、苦笑い。
「何が食べたい?」
あたしはこれ以上学校での事を考えないように、頭を左右に振ってから巳波に向き直る。
そうだよ、今は学校のことより巳波の事に向き合わなきゃ。
カレー?ロールキャベツ?
それとも、定番?の肉じゃが?
男子が好きそうな物を頭の中で思い浮かべていく。
「……いちごミルク」
あぁ!そうだよね、いちごミルクね今作っ…
「…って!!いちごミルク!?」
何なんだ、この人は。