家の前で倒れている男に餌付けしてみた結果(仮)
男はキャップを深く被っていて、ニヤついている口元しかよく見えない。
「もうわかったから、何であたしはこんな状態になってんの」
何だか、このふざけた男を見てると怖いを通り越して呆れてくる。
いつの間にかあんなに震えていた身体も震えは止まってるし。
「それは“麒麟”に関わったから…君、覚えはない?」
“麒麟”
この言葉は知ってる。
…知ってるけど、関わった覚えなんて全然ない。
そんな暴走族なんかと関わりを持ったことなんて…
「八神大河」
知らない
「白須唯」
知らない
「長谷部理人」
知らない
「天海夏目」
知らない
「巳波八尋」
……知ってる
「…以上が“麒麟”の幹部メンバー。やっぱ知らねぇの?」
「……」
知ってる、知ってる。
巳波、八尋
それは紛れもなく、スミレ色の瞳をした同居人の名前。
そういえば、とあの日を思い出す。