家の前で倒れている男に餌付けしてみた結果(仮)
夜空に浮かぶ満月
〈巳波八尋side〉
俺の腕の中で意識を失くした柚を見つめる。
もう冬になる季節だ、制服のままの柚の手を触ってみると、思った通り凄く冷たかった。
「ごめん」
俺のせい。
「帰ろうか…」
暖かい部屋で早く柚を暖かくあっためてあげないと。
柚を落とさないように、お姫様抱っこをする。
よかった。
何もされてなくてよかった。
運良く、コンビニへと寄ろうと外に出た時、柚の後ろ姿が見えて、車に押し込まれてるシーンを目撃して、ここまで来ることが出来た。
しかし、帰りはバイクでは無理。
柚が目覚めないまま、運転なんて危険すぎる。
柚がバイクから落ちて引かれてしまうのがオチ。
「しょうが、ないか」
俺はバイクをこの場所に置いていくことに決め、柚を抱えたまま外へと出る。
「…星か」
いつ振りに空を見上げただろう。
とっくに外は暗くなっていて、星が空一面に広がっている。