家の前で倒れている男に餌付けしてみた結果(仮)
今日は満月で、俺はふと彼等と初めて出会った頃の事を思い出した。
あれは今よりもっと寒く、白い雪がシンシンと積もっていた雪の日。
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「お母さん、お母さん」
その日も、何も答えてくれない母親に“お母さん”と呼び続けていた幼い俺。
母さんは俺に振り向きもしなかった。
だけど、俺を捨てはしなかったんだ。
“お母さん”
と呼んで、たまに返ってくる応えは
“やめて…お母さんなんて呼ばないでよ!”
そんな母さんの悲痛な叫び。
最初の内は胸が痛かったと思う。
だけど、そんな痛みも徐々に慣れていった。
母さんは俺を
“憎い”
と言った。
“無表情で不気味気持ち悪い”
と言った。
“産まなければ良かった”
と言った。
だけど俺は懲りずにまた“お母さん”と口に出す。
母さんが嫌いな父親と似た顔で。
母さんが不気味と言った無表情で。
好きでこの顔に生まれてきたわけじゃない。
好きで無表情になったわけじゃない。
笑えない、笑えない。
“お母さん”に罵倒される度、俺の世界から色が消えていく。