家の前で倒れている男に餌付けしてみた結果(仮)
「何か柚鈴が優しくなったぁ。泣きそう〜!!」
「泣くなっ、あたしに鼻水付けたら怒るからね」
どうしてこんなに変われたのかなんて、答えは巳波のおかげ。
巳波と出会ってあたしのつまらない小さな世界が広がって、キラキラとして見える。
まだ、恋愛に関しては初心者で告白する勇気なんて持ち合わせていない。
だけど、初めて人の為に綺麗になりたい、もっと見て欲しいと思ったんだ。
「…ねぇ、あたしも泣きたくなったら心の胸借りていいかな?」
「いいよ、当たり前っ!」
強くなりたい。
あなたの為に上辺だけの繕った強さじゃない、本当に芯から強くなりたいの。
「…心が思ってるより多分弱いからさ、あたし」
強がりじゃなくて、他人も包み込めるような強さ。
「…うん、意外と寂しがり屋だもんね柚鈴は」
そうだよ、あたしは本当は誰よりも弱いの。
「…で、いい加減離れようか」
「あはっ、そうだね」
此処が教室だということを忘れ、お互いに赤面する。
クラスの半分くらいの人の視線を痛いくらいに感じるけど、多分会話は聞こえなかったと思う。
あたし達はそんな視線を見て見ぬフリして他の作業に取り掛かった。