家の前で倒れている男に餌付けしてみた結果(仮)


「な〜んか変わったじゃねぇか」


俺もそう思う。


最近…変だ。


「…まぁ、八尋はそのままでいてくれたらいいんだけどなぁ」


「……」


そのままって何?


俺はこのまま何も変わらずに生きていく自信なんてもうない。


…もう変わった、十分に。


あの時間に取り残されずにそろそろ前に進もうか。


「…変わる」


チラリと夏の顔を盗み見れば相変わらずへらへらと薄ら笑いを浮かべたまま


「いい方に変わっていくなら俺も嬉しいよ〜」


どこから出したのか分からない棒付きの飴をパクリと口にくわえた。


「そうだな…」


甘い香りが夏から漂ってくる。


あ、この匂いは…


「八尋もいちごミルク味食べるか?」


「食べる」


やっぱりいちごミルク味。


受け取った飴を口にくわえ、口の中で転がすとふんわり甘い香りが広がった。


「甘いな…」


そんな当たり前のことを呟き、ボーッと時計の針を眺める。


時刻は2時14分


おやつの時間はまだあともう少し。


side END

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