好きじゃなくてもいいよ
高校一年生の時。

みんなで期末テストの勉強会をしようということになった。

親が共働きで、おまけに部屋が10畳あるというのを聞いて、翔の家でやろうと言い出したのは誰だったか。

多分、めぐだ。

めぐしかいない。

私は大好きな翔の家に入れる!!という喜びと緊張から、誰よりも先に翔の家に着いてしまった。

「まだ片付け中だよ。」

笑う翔に促され部屋の中に入ると、真っ先に勉強机の上の写真立てに目がいった。

そこには、中学生の翔と…セーラー服を着た、かわいい女の子が写っていた。

どう見ても、恋人同士だ。

あまりの衝撃に写真から目をそらせずにいると、翔がそれに気づき写真立てを引き出しにしまってしまった。

「かわいい…彼女さんだね…」

呆然としながら言うと、翔は悲しげに笑ったのだ。

「もう…死んじゃったけどな。」













「由梨!!由梨ってば!!」

物思いに耽っていると、めぐの大きな声で現実に戻される。

「は、え!?な、なに?」

「なに?じゃないよ!!翔、また女子に呼び出されてる!!」

私の気持ちを知っているめぐは、悲しそうな顔をして私に言った。

ズキン、と、胸の奥が痛む。



またか…。

そりゃあ、そうだよね、翔モテるもん。



「良いの!?由梨、告白しなくていいの!?このままじゃいつか翔誰かと付き合っちゃうよ!?」

それは、ないよ。

そう言いかけて口を閉じる。


きっと翔はまた同じセリフを言ってる。




「あんたのことは好きじゃない。これから先好きにもならない。それでも良い?」




翔の好きは、全てあのセーラー服の彼女のものなのだ。

亡くなった人に、生きてる人間が叶うはずがないのだから。
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