ビターチョコ
9月になって、文化祭の準備が本格化してきた。
本番は9月の第4週の土日だ。
私のクラスは皆でカフェを運営することになっている。
材料等の交渉は、宝月グループが特別協力としてバックアップしてくれた。
麗眞くんのお姉さんが経営コンサルタントであるゆえ、様々な企業とのコネクションがあるようだった。
宝月グループは味方にすると心強いが、敵にすると恐ろしい。
クラス内でも学校内でも人気であり、他校の生徒からも人気が出そうな麗眞と椎菜は売子ちゃんからは除外されている。
表向きの理由は「文化祭実行委員としての仕事と軽音楽サークルが忙しい」とのことである。
しかし、実際の理由は、麗眞くんの過保護である。
『他校の生徒に椎菜が絡まれたら困る。
絡んできたやつを骨折で済ませられればいいけど、下手したら殺しかねない』
ちょっと、いや……かなり物騒だ。
そこまでいくと、過保護も度が過ぎている気がしないでもない。
華恋も演劇部で忙しいとのこと。
受験生に最高のものを見せないと、と息巻いている。
その気合いの入り方は、先輩たちにも負けていなかった。
親友のよしみで、少しだけリハーサルを見せてもらった。
片想いの奥手な男子が才色兼備の先輩女子生徒(しかも生徒会長)に一目惚れをする、という
ありがちなストーリー。
だからこそ、先輩後輩も一切関係のないスパルタ指導をしながら練習をしているようだ。
深月が手掛けただけあって、心理描写や心理学テクニックがふんだんに盛り込まれている。
彼女本人は、奥手な主人公にアドバイスをする幼なじみ役として、心理学テクニックを享受する。
役作りなどいらない、素の本人をそのまま出せばいいという、かなりの役得だ。
才色兼備の先輩女子生徒役が華恋なのだ。
恋愛のカリスマの異名は伊達ではない。
奥手な男子生徒への駆け引きが絶妙で、観客をやきもきさせていた。
美冬は放送部のラジオドラマがあるということで、かなり忙しいようだ。
朝早くから来て、下校時間ギリギリまで部活に勤しんでいるらしい。
売子担当は深月と私とでやることになった。
深月が軽音楽サークルで出番の間は、私の相方さんが変わるだけのようだ。
あっという間に本番当日がやってきた。
他校の生徒の制服の子や、ウチの高校を志望してくる中学生の子が意外にもたくさんいて、面食らってしまった。
意外にいるんだなぁ、こんなハチャメチャな学園に行きたい子たち。
文化祭は盛況で幕を閉じた。
私が売子ちゃんをしているところを見たいという理由で、拓実くんも来てくれた。
売子ちゃんらしい、フリルがふんだんに使われたエプロン(しかもひざ上丈)をまじまじと見られた。
こんな短いスカートも、フリルの服も、着慣れないから気恥ずかしい。
「いいじゃん、それ。
そういう服、もっと着ればいいのに。
理名ちゃんがそんな恰好でカフェでアルバイトとかしたら、絶対俺は通い詰めるね」
その言葉に、聞いている私の方も顔を赤くしたのだった。
不慣れながら、売子ちゃんも頑張った。
空き時間に麗眞くんの家に通い詰めて、執事の相沢さんに所作を学んだりもした。
空き時間は一緒に回ったりもした。
本来は、他校の生徒は文化祭の余興を楽しむための「後夜祭」には入れない。
しかし、理事長の別にいいんじゃない?の一言で、そのルールは撤回された。
後夜祭の軽音楽サークルに拓実くんがベース担当として飛び入り参加する場面もあった。
これにはウチの高校の女子生徒が、一斉に目をハートにしていた。
美冬や華恋には、理名の彼氏、何でも出来るねだったり、理名も軽音楽サークル入ればいいんじゃん?
などとからかわれた。
拓実くんはまだ彼氏ではない。
しかも、私が軽音楽サークルなんてもってのほかだ。
部長である麗眞くん自らがバンドを組んだり、バンドの曲を彼自らがプロデュースして、小さいライブハウス顔負けの盛り上がり方だった。
彼が作詞作曲までちゃっかり行っていたのは驚いた。
そんな暇がどこにあったんだろう。
椎菜と深月がボーカルとして美声を披露して、全校生徒に混じって他校の生徒(主に男子生徒)がその歌声に聞き惚れた。
入り口に近いところに、見覚えのあるボタンダウンのワイシャツに、ネイビーのスラックスが見えた。
秋山くん、来てるのか。
気まずいのか、深月本人にバレないように覗きに来たようだ。
ちょうど演奏が終わったところで、深月が客席に向かって手を振ったとき。
秋山くんと深月の目線が、ほんの一瞬だけ、合ったように見えた。
文化祭終わりは、宝月家のカラオケパーティールームを親友たちで貸切り、お疲れ様パーティーをした。
未成年は本当は徹夜はいけないのだが、そんなルールは無視だ。
宝月家の邸宅は日本のようで日本でない場所なのだから。
しかも、振替休日で翌日は休みになっている。
皆で、徹夜でどんちゃん騒ぎをした。
本番は9月の第4週の土日だ。
私のクラスは皆でカフェを運営することになっている。
材料等の交渉は、宝月グループが特別協力としてバックアップしてくれた。
麗眞くんのお姉さんが経営コンサルタントであるゆえ、様々な企業とのコネクションがあるようだった。
宝月グループは味方にすると心強いが、敵にすると恐ろしい。
クラス内でも学校内でも人気であり、他校の生徒からも人気が出そうな麗眞と椎菜は売子ちゃんからは除外されている。
表向きの理由は「文化祭実行委員としての仕事と軽音楽サークルが忙しい」とのことである。
しかし、実際の理由は、麗眞くんの過保護である。
『他校の生徒に椎菜が絡まれたら困る。
絡んできたやつを骨折で済ませられればいいけど、下手したら殺しかねない』
ちょっと、いや……かなり物騒だ。
そこまでいくと、過保護も度が過ぎている気がしないでもない。
華恋も演劇部で忙しいとのこと。
受験生に最高のものを見せないと、と息巻いている。
その気合いの入り方は、先輩たちにも負けていなかった。
親友のよしみで、少しだけリハーサルを見せてもらった。
片想いの奥手な男子が才色兼備の先輩女子生徒(しかも生徒会長)に一目惚れをする、という
ありがちなストーリー。
だからこそ、先輩後輩も一切関係のないスパルタ指導をしながら練習をしているようだ。
深月が手掛けただけあって、心理描写や心理学テクニックがふんだんに盛り込まれている。
彼女本人は、奥手な主人公にアドバイスをする幼なじみ役として、心理学テクニックを享受する。
役作りなどいらない、素の本人をそのまま出せばいいという、かなりの役得だ。
才色兼備の先輩女子生徒役が華恋なのだ。
恋愛のカリスマの異名は伊達ではない。
奥手な男子生徒への駆け引きが絶妙で、観客をやきもきさせていた。
美冬は放送部のラジオドラマがあるということで、かなり忙しいようだ。
朝早くから来て、下校時間ギリギリまで部活に勤しんでいるらしい。
売子担当は深月と私とでやることになった。
深月が軽音楽サークルで出番の間は、私の相方さんが変わるだけのようだ。
あっという間に本番当日がやってきた。
他校の生徒の制服の子や、ウチの高校を志望してくる中学生の子が意外にもたくさんいて、面食らってしまった。
意外にいるんだなぁ、こんなハチャメチャな学園に行きたい子たち。
文化祭は盛況で幕を閉じた。
私が売子ちゃんをしているところを見たいという理由で、拓実くんも来てくれた。
売子ちゃんらしい、フリルがふんだんに使われたエプロン(しかもひざ上丈)をまじまじと見られた。
こんな短いスカートも、フリルの服も、着慣れないから気恥ずかしい。
「いいじゃん、それ。
そういう服、もっと着ればいいのに。
理名ちゃんがそんな恰好でカフェでアルバイトとかしたら、絶対俺は通い詰めるね」
その言葉に、聞いている私の方も顔を赤くしたのだった。
不慣れながら、売子ちゃんも頑張った。
空き時間に麗眞くんの家に通い詰めて、執事の相沢さんに所作を学んだりもした。
空き時間は一緒に回ったりもした。
本来は、他校の生徒は文化祭の余興を楽しむための「後夜祭」には入れない。
しかし、理事長の別にいいんじゃない?の一言で、そのルールは撤回された。
後夜祭の軽音楽サークルに拓実くんがベース担当として飛び入り参加する場面もあった。
これにはウチの高校の女子生徒が、一斉に目をハートにしていた。
美冬や華恋には、理名の彼氏、何でも出来るねだったり、理名も軽音楽サークル入ればいいんじゃん?
などとからかわれた。
拓実くんはまだ彼氏ではない。
しかも、私が軽音楽サークルなんてもってのほかだ。
部長である麗眞くん自らがバンドを組んだり、バンドの曲を彼自らがプロデュースして、小さいライブハウス顔負けの盛り上がり方だった。
彼が作詞作曲までちゃっかり行っていたのは驚いた。
そんな暇がどこにあったんだろう。
椎菜と深月がボーカルとして美声を披露して、全校生徒に混じって他校の生徒(主に男子生徒)がその歌声に聞き惚れた。
入り口に近いところに、見覚えのあるボタンダウンのワイシャツに、ネイビーのスラックスが見えた。
秋山くん、来てるのか。
気まずいのか、深月本人にバレないように覗きに来たようだ。
ちょうど演奏が終わったところで、深月が客席に向かって手を振ったとき。
秋山くんと深月の目線が、ほんの一瞬だけ、合ったように見えた。
文化祭終わりは、宝月家のカラオケパーティールームを親友たちで貸切り、お疲れ様パーティーをした。
未成年は本当は徹夜はいけないのだが、そんなルールは無視だ。
宝月家の邸宅は日本のようで日本でない場所なのだから。
しかも、振替休日で翌日は休みになっている。
皆で、徹夜でどんちゃん騒ぎをした。