ビターチョコ
ある日、いつも通り学校に行った。
昇降口にあるベンチに、力なく腰掛ける麗眞くんがいた。
麗眞くんを必死に諭しながら励ましているのは椎菜だ。
2人の目は、泣いた後なのだろうか。
真っ赤に充血していた。
麗眞くんが泣いているところなんて、1年一緒にいて見たことがない。
それだけの何かが起こったことは、直感で分かった。
掃除をサボり、皆でリムジンに乗って宝月家の邸宅のシアタールームで映像を見る。
麗眞くんが泣いた理由が、分かった。
私の親友たちは、泣いている人も、吐き気を必死に堪えている人もいた。
映像では、深月が、塾のあるビルを出て、駅に向かって歩いていた。
突然、背後から男2人が現れ、思い切り頭を殴られる。
塾近くの路上に停められていた車に連れ込まれている。
「こんなとこじゃマズい」
「ゆっくり楽しまないとな」
そんな会話が聞こえた。
車は、どこかを目的に走っているようだった。
車が停まると、いやらしい笑みを浮かべた知らない男2人に強姦されていた。
やだ、やめて!
意識を取り戻した深月が抵抗する声も、録音されていた。
その口は塞がれ、深月が着ていた正瞭賢高等学園の制服は無惨にも破られている。
男のうちの1人が深月の身体を押さえつけて、1人が行為に及ぶ。
身体を押さえつけられては、せっかく宿泊オリエンテーションで習った護身術も使えない。
そもそも、大の大人と高校生では、体格差がありすぎる。
ここからは、深月自身が暴れたことで、制服に付けられていた機械が外れたのか、壊れたのかで調子が悪くなったのだろう。
映像は途切れ途切れになり、時々、男の荒い息遣いと深月の泣き叫ぶ声が聞こえただけであった。
しばらく無音が続いた。
男の人の声が聞こえた。
聞いたことのない、低く野太い男の声だった。
『強姦罪・さらに集団強姦罪の現行犯で逮捕する』
その後に、男の舌打ちと、邪魔だという台詞。
路上に身体が倒れる音がした。
『これも邪魔だ』
重いものが地面に落ちる音。
きっと深月の鞄だろう。
そこで、映像は終わっていた。
その後のことは、麗眞くんが補足をする。
「降ろされた場所のすぐ近くにあったコンビニが、たまたま秋山くんがアルバイトしていた場所だった。
見ていられなかった彼は、スタッフルームで服を脱ぐように言った。
彼のパーカーとたまたま女性社員のロッカーにあったズボンを借りて着替えさせた。
脱いだ服は、ビニール袋に入れさせたのは、正解だったな。
体液からDNAが割れるから重要な証拠になる。
彼女が持っている機械のGPS機能で場所を突き止めた俺が、そのコンビニに着いてスタッフルームに入った。
その時は、秋山くんが深月ちゃんを抱きしめていたな」
「ビニール袋に入れた服を持ったままの深月ちゃんと秋山くんを連れて、相沢に車を運転させた。
行き先は愛誠産婦人科。
そこは、被害に遭った人へのケアがしっかりしているところだった。
そこでは何があったかは、俺は知らないんだけどな。
2、3時間くらいかかっていた。
その間に、彼女の制服に着けた機械だけは回収させてもらって、映像は秋山くんに見せた。
その後、彼女と秋山くんを宝月家邸宅に泊まらせた。
彼女は憔悴しきっていて、しかも眠っていたから、秋山くんがお姫様抱っこしてベッドに寝かせたんだけどな」
誰も、何も言うことが出来なかった。
いつかは、こんなことが起こると危惧してはいた。
まさか、こんなに早いとは。
私へのいじめが始まった時は今はこの場にいない深月自身もこんな気持ちになったことがあったのか。
昇降口にあるベンチに、力なく腰掛ける麗眞くんがいた。
麗眞くんを必死に諭しながら励ましているのは椎菜だ。
2人の目は、泣いた後なのだろうか。
真っ赤に充血していた。
麗眞くんが泣いているところなんて、1年一緒にいて見たことがない。
それだけの何かが起こったことは、直感で分かった。
掃除をサボり、皆でリムジンに乗って宝月家の邸宅のシアタールームで映像を見る。
麗眞くんが泣いた理由が、分かった。
私の親友たちは、泣いている人も、吐き気を必死に堪えている人もいた。
映像では、深月が、塾のあるビルを出て、駅に向かって歩いていた。
突然、背後から男2人が現れ、思い切り頭を殴られる。
塾近くの路上に停められていた車に連れ込まれている。
「こんなとこじゃマズい」
「ゆっくり楽しまないとな」
そんな会話が聞こえた。
車は、どこかを目的に走っているようだった。
車が停まると、いやらしい笑みを浮かべた知らない男2人に強姦されていた。
やだ、やめて!
意識を取り戻した深月が抵抗する声も、録音されていた。
その口は塞がれ、深月が着ていた正瞭賢高等学園の制服は無惨にも破られている。
男のうちの1人が深月の身体を押さえつけて、1人が行為に及ぶ。
身体を押さえつけられては、せっかく宿泊オリエンテーションで習った護身術も使えない。
そもそも、大の大人と高校生では、体格差がありすぎる。
ここからは、深月自身が暴れたことで、制服に付けられていた機械が外れたのか、壊れたのかで調子が悪くなったのだろう。
映像は途切れ途切れになり、時々、男の荒い息遣いと深月の泣き叫ぶ声が聞こえただけであった。
しばらく無音が続いた。
男の人の声が聞こえた。
聞いたことのない、低く野太い男の声だった。
『強姦罪・さらに集団強姦罪の現行犯で逮捕する』
その後に、男の舌打ちと、邪魔だという台詞。
路上に身体が倒れる音がした。
『これも邪魔だ』
重いものが地面に落ちる音。
きっと深月の鞄だろう。
そこで、映像は終わっていた。
その後のことは、麗眞くんが補足をする。
「降ろされた場所のすぐ近くにあったコンビニが、たまたま秋山くんがアルバイトしていた場所だった。
見ていられなかった彼は、スタッフルームで服を脱ぐように言った。
彼のパーカーとたまたま女性社員のロッカーにあったズボンを借りて着替えさせた。
脱いだ服は、ビニール袋に入れさせたのは、正解だったな。
体液からDNAが割れるから重要な証拠になる。
彼女が持っている機械のGPS機能で場所を突き止めた俺が、そのコンビニに着いてスタッフルームに入った。
その時は、秋山くんが深月ちゃんを抱きしめていたな」
「ビニール袋に入れた服を持ったままの深月ちゃんと秋山くんを連れて、相沢に車を運転させた。
行き先は愛誠産婦人科。
そこは、被害に遭った人へのケアがしっかりしているところだった。
そこでは何があったかは、俺は知らないんだけどな。
2、3時間くらいかかっていた。
その間に、彼女の制服に着けた機械だけは回収させてもらって、映像は秋山くんに見せた。
その後、彼女と秋山くんを宝月家邸宅に泊まらせた。
彼女は憔悴しきっていて、しかも眠っていたから、秋山くんがお姫様抱っこしてベッドに寝かせたんだけどな」
誰も、何も言うことが出来なかった。
いつかは、こんなことが起こると危惧してはいた。
まさか、こんなに早いとは。
私へのいじめが始まった時は今はこの場にいない深月自身もこんな気持ちになったことがあったのか。