ビターチョコ
大丈夫だろうか、この番組。
私の心配は、杞憂に終わる。
『このコーナー参りましょう!
お悩みカルテ!
このコーナーは、リスナー様からのお悩みのお便りにアドバイスをするコーナーです。
では、さっそくお便りを読んでいきたいと思います!』
楽しみだねぇ、今日はどんなかなぁ?
と合いの手を入れるのは椎菜ちゃんたちだ。
呼ばれるのは初めてであるはずだが、もうノリノリだ。
『ペンネーム 医者を目指して勉強中 さんからいただきました。
突然のお便り、失礼します。
恋愛に関する相談があり、ハガキを送らせていただきました。
僕には違う高校なのですが気になっている子がいます。
その子はバイトも奇しくも同じで、運命を感じました。
気になる人に僕と付き合うことを本気で考えてほしいという曖昧な告白をしたきり、なんの返事もないのが不安です。
バイト先でトラブルに巻き込まれた後、泣いてしまっていた彼女の顔を見ていられず、どうしたら良いのか分からずに、とにかく泣き止んでほしくて、キスをしてしまいました。
僕はこれから、どうするべきでしょうか。
いやー、初っ端から悲痛なお悩みですね』
『恋愛ってね、その人の心の闇が出てきやすいの。
自分に自信がないとか、嫌われたら怖い、とかそういうマイナス面が、ね。
でも、それは絶対、隠しちゃダメ。
ありのままを見せないと、人はマイナス面を隠されてるって思って、猜疑心を持つことで信用されなくなる。
その投稿者さんも、その女の子も!
自分に自身を持って、ありのままを気になるお相手さんにぶつけるべきよ。
まぁ、一番の理由としては上手く返事ができないっていうのも、あるだろうけど』
深月の明るい声が響く。
それが出来れば、こんなに苦労しない。
それに、少し無責任ではないか。
そう言う深月だって、秋山くんへの返事をまだしていないくせに。
自分の気持ちは、ハッキリしているのに、勇気がない。
連絡すれば、いいのだが、そう簡単に会えない。
きっと、今はどの高校も試験の時期で忙しいだろう。
『しかしですね、
この投稿者も、投稿者さんのお話に出てきた女の子も。きっと混乱しているはずです。
どうしたらいいのか。
無理やり前に進めるよりも、今は少し時間を開けて、落ち着かせてからのほうがいいと思います。
素直にお互いの気持ちを打ち明けられるはずって、私はそう思います』
椎菜ちゃんの助け船はありがたい。
さすが、自身が恋愛中で幸せの真っ只中にいるだけある。
『俺も椎菜に賛成だな。
どうしょうもなくて、関係を何とか前に進めたくて、って投稿者さんの焦りが分かるんだ。
俺も一時期、椎菜に対してそうだった。
学校が違うって言ってたし、側に居て見守ることができないなら、なおさら。
だからこそ、お互いがどうしたいか?
頭を冷やして、冷静になれたら改めて気持ちを伝えるのが、一番いいと俺は思うな』
麗眞くんが神様に思えた。
番組は、投稿者の恋愛を応援するような前向きな恋愛ソングが流れたあと、他のいくつかの投稿を紹介して、終わった。
あの最初の投稿者、絶対拓実くんだよね?
お弁当を食べ終えた私は、ザワザワとした喧騒の中にいるのがいたたまれなくなって、
広い庭園に出た。
ため息を1つついてベンチに腰を下ろしたが、夏らしからぬ少し冷たい風が身を縮こませた。
「夏、って感じじゃない……」
何気なく携帯を開くと、バイト先の人からメールが来ていた。
『昨日のことがあって、全員、バイトはしばらく休み。
店長から平謝りされたよ。
近々、店を閉めるって!
だから、近いうちに私物が置いてあるなら取りに来たほうがいいかも!』
あの店、閉まるのか。
短いアルバイト生活だったなぁ。
「風邪ひくぞ、岩崎。
サークルもあるんだろ?
今風邪引いたら、文化祭の練習できないぞ。
こんなところにいないで、教室に戻ったらどうだ?
友人たちがお前を探してたぞ?
浅川なんて、苦手なはずの屋上に足を踏み入れてフラッシュバック起こして保健室にいるぞ。
まったく、いい友達を持ったな」
話しかけてきたのは、担任教師だ。
『青春だなぁ、恋煩いか。
なりふりかまわず、当たって砕けるのも一興だぞ。
若いときにしかできない恋愛っていうのも、あるもんだ。
皆が皆、矢榛と宝月みたいなベタ甘な恋愛がいいってわけでもないだろ。
まぁ、アイツらはちょっと慎めって感じだけどな。
正直、アイツらを見ていると蕁麻疹出そうだぞ、むず痒くて」
「勉強とか進路指導だけ、上手いのかと思っていました。
先生、ありがとうございます」
先生に向かってぺこりと頭を下げると、教室へは向かわず、保健室に向かった。
深月の様子を伺ってから、と思ったのだ。
何故かドアがほんの数ミリだけ開いていて、その外には隙間から覗くように、椎菜や麗眞くんがいた。
私がドアを開けようとすると、それを彼女たちに押し留められる。
その隙間から、見えてしまった。
深月と秋山くんが、躊躇しながら、距離感を掴むような感じで、ぎこちなくキスを交わしていたのだった。
私の心配は、杞憂に終わる。
『このコーナー参りましょう!
お悩みカルテ!
このコーナーは、リスナー様からのお悩みのお便りにアドバイスをするコーナーです。
では、さっそくお便りを読んでいきたいと思います!』
楽しみだねぇ、今日はどんなかなぁ?
と合いの手を入れるのは椎菜ちゃんたちだ。
呼ばれるのは初めてであるはずだが、もうノリノリだ。
『ペンネーム 医者を目指して勉強中 さんからいただきました。
突然のお便り、失礼します。
恋愛に関する相談があり、ハガキを送らせていただきました。
僕には違う高校なのですが気になっている子がいます。
その子はバイトも奇しくも同じで、運命を感じました。
気になる人に僕と付き合うことを本気で考えてほしいという曖昧な告白をしたきり、なんの返事もないのが不安です。
バイト先でトラブルに巻き込まれた後、泣いてしまっていた彼女の顔を見ていられず、どうしたら良いのか分からずに、とにかく泣き止んでほしくて、キスをしてしまいました。
僕はこれから、どうするべきでしょうか。
いやー、初っ端から悲痛なお悩みですね』
『恋愛ってね、その人の心の闇が出てきやすいの。
自分に自信がないとか、嫌われたら怖い、とかそういうマイナス面が、ね。
でも、それは絶対、隠しちゃダメ。
ありのままを見せないと、人はマイナス面を隠されてるって思って、猜疑心を持つことで信用されなくなる。
その投稿者さんも、その女の子も!
自分に自身を持って、ありのままを気になるお相手さんにぶつけるべきよ。
まぁ、一番の理由としては上手く返事ができないっていうのも、あるだろうけど』
深月の明るい声が響く。
それが出来れば、こんなに苦労しない。
それに、少し無責任ではないか。
そう言う深月だって、秋山くんへの返事をまだしていないくせに。
自分の気持ちは、ハッキリしているのに、勇気がない。
連絡すれば、いいのだが、そう簡単に会えない。
きっと、今はどの高校も試験の時期で忙しいだろう。
『しかしですね、
この投稿者も、投稿者さんのお話に出てきた女の子も。きっと混乱しているはずです。
どうしたらいいのか。
無理やり前に進めるよりも、今は少し時間を開けて、落ち着かせてからのほうがいいと思います。
素直にお互いの気持ちを打ち明けられるはずって、私はそう思います』
椎菜ちゃんの助け船はありがたい。
さすが、自身が恋愛中で幸せの真っ只中にいるだけある。
『俺も椎菜に賛成だな。
どうしょうもなくて、関係を何とか前に進めたくて、って投稿者さんの焦りが分かるんだ。
俺も一時期、椎菜に対してそうだった。
学校が違うって言ってたし、側に居て見守ることができないなら、なおさら。
だからこそ、お互いがどうしたいか?
頭を冷やして、冷静になれたら改めて気持ちを伝えるのが、一番いいと俺は思うな』
麗眞くんが神様に思えた。
番組は、投稿者の恋愛を応援するような前向きな恋愛ソングが流れたあと、他のいくつかの投稿を紹介して、終わった。
あの最初の投稿者、絶対拓実くんだよね?
お弁当を食べ終えた私は、ザワザワとした喧騒の中にいるのがいたたまれなくなって、
広い庭園に出た。
ため息を1つついてベンチに腰を下ろしたが、夏らしからぬ少し冷たい風が身を縮こませた。
「夏、って感じじゃない……」
何気なく携帯を開くと、バイト先の人からメールが来ていた。
『昨日のことがあって、全員、バイトはしばらく休み。
店長から平謝りされたよ。
近々、店を閉めるって!
だから、近いうちに私物が置いてあるなら取りに来たほうがいいかも!』
あの店、閉まるのか。
短いアルバイト生活だったなぁ。
「風邪ひくぞ、岩崎。
サークルもあるんだろ?
今風邪引いたら、文化祭の練習できないぞ。
こんなところにいないで、教室に戻ったらどうだ?
友人たちがお前を探してたぞ?
浅川なんて、苦手なはずの屋上に足を踏み入れてフラッシュバック起こして保健室にいるぞ。
まったく、いい友達を持ったな」
話しかけてきたのは、担任教師だ。
『青春だなぁ、恋煩いか。
なりふりかまわず、当たって砕けるのも一興だぞ。
若いときにしかできない恋愛っていうのも、あるもんだ。
皆が皆、矢榛と宝月みたいなベタ甘な恋愛がいいってわけでもないだろ。
まぁ、アイツらはちょっと慎めって感じだけどな。
正直、アイツらを見ていると蕁麻疹出そうだぞ、むず痒くて」
「勉強とか進路指導だけ、上手いのかと思っていました。
先生、ありがとうございます」
先生に向かってぺこりと頭を下げると、教室へは向かわず、保健室に向かった。
深月の様子を伺ってから、と思ったのだ。
何故かドアがほんの数ミリだけ開いていて、その外には隙間から覗くように、椎菜や麗眞くんがいた。
私がドアを開けようとすると、それを彼女たちに押し留められる。
その隙間から、見えてしまった。
深月と秋山くんが、躊躇しながら、距離感を掴むような感じで、ぎこちなくキスを交わしていたのだった。