ビターチョコ
夕食を食べ終えて、部屋に戻った。
2人ともアメニティとして用意されていたドイツでは有名な入浴剤が入れられた部屋のお風呂に浸かった。
ルームウェアを着ていると、部屋をノックする音がした。
「んー?
誰?」
「琥珀だよー!
ごめんね、こんな夜に。
1つだけ報告があって。
入って、いいかな?」
「巽くんのことでしょ?
気になってたし、入って入って!」
椎菜が手招きする。
ボーダー柄のロングパンツとニットを着た琥珀が、おずおずと部屋に入ってきた。
横並びになっているソファ、ではなく、ライティングデスクの前のチェアに腰を下ろす。
顔を真っ赤にしたまま、琥珀が言葉を紡いだ。
「正式に、付き合うことになったんだ、優弥と。
何か、今でも頭がふわふわして夢見心地だよ。
好きな人と気持ちが通じる、ってこんなに嬉しいんだな、って思った」
いつもの琥珀の快活さはどこへやら、終始俯いていて、顔は耳まで真っ赤だ。
「顔赤いのは、別に優弥のせいだけじゃなくて、ここのアメニティーの入浴剤のせい!
あれ、すっごく温まるから……!」
「琥珀……!
かーわーいーいー!」
椎菜が琥珀にハグすると、彼女の耳元で何かを囁いた。
「んも、椎菜!
まだ私たちはそこまで……!
そもそも、痛い、って聞くし……」
「最初はね?
大きさにもよるけど、痛いよ?
ロストするには痛みもつきもの、ってことで!
これは理名にも言えるけど、大事なのは痛みも耐えられる信頼感と、後は勢いよ!
深月と美冬も経験者なんだし、彼女たちにも聞くといいと思うけど。
とにかく、深月たちへの報告はまだなんでしょ?
早く報告して、早く寝な?
身体冷えて風邪引いたら、巽くん心配するよ、きっと」
「そうそう。
多分、麗眞くん……には負けると思うけど、あんな感じで溺愛されるだろうし。
風邪引くと大変そう。
早く寝な?
おやすみ、琥珀。
良かったね!
両想いになれて」
琥珀は顔を真っ赤にしながら、そそくさと部屋から出て行った。
可愛かったな、琥珀。
恋すると、ああなるんだ。
ちょっと羨ましい。
「ねぇ、理名?」
水を何かの薬と一緒に含んだ後、一息ついた椎菜に話しかけられた。
この雰囲気は、かつて、初めて麗眞くんのお屋敷にお世話になった日とそっくりだ。
その当時を思い出して、何だか懐かしくなった。
「麗眞と、深月と秋山くんで話し合ったの。
班別自由行動とは言ってるけど。
私たちも深月たちも行くところはバラバラじゃない?
実質自由行動みたいなものじゃん、ってね。
ホテルを出た後に適当に写真でも撮っておけば、証拠になるし。
万が一迷っても、別荘に行けば無事なのは分かるし。
理名は、拓実くんと会ってくればいいんじゃないかな。
会いたいんでしょ?
彼に。
琥珀が心底羨ましい、って顔してるもん。
拓実くんも、きっと1日でも早く理名に会いたいはずだよ」
そうなのかな。
会えるなら、嬉しいし、素直に会いたい。
別れ際のあんなキスだけじゃ、会えなかった数ヶ月は寂しすぎた。
「別に、その通りにしろとは言わないから、考えてみて。
私は、そろそろ寝るね。
理名、おやすみ」
彼女はそう言って、あっという間に夢の世界へ堕ちて行った。
寝るの、早いな……
椎菜におやすみと返したものの、私はなかなか寝付けなかった。
2人ともアメニティとして用意されていたドイツでは有名な入浴剤が入れられた部屋のお風呂に浸かった。
ルームウェアを着ていると、部屋をノックする音がした。
「んー?
誰?」
「琥珀だよー!
ごめんね、こんな夜に。
1つだけ報告があって。
入って、いいかな?」
「巽くんのことでしょ?
気になってたし、入って入って!」
椎菜が手招きする。
ボーダー柄のロングパンツとニットを着た琥珀が、おずおずと部屋に入ってきた。
横並びになっているソファ、ではなく、ライティングデスクの前のチェアに腰を下ろす。
顔を真っ赤にしたまま、琥珀が言葉を紡いだ。
「正式に、付き合うことになったんだ、優弥と。
何か、今でも頭がふわふわして夢見心地だよ。
好きな人と気持ちが通じる、ってこんなに嬉しいんだな、って思った」
いつもの琥珀の快活さはどこへやら、終始俯いていて、顔は耳まで真っ赤だ。
「顔赤いのは、別に優弥のせいだけじゃなくて、ここのアメニティーの入浴剤のせい!
あれ、すっごく温まるから……!」
「琥珀……!
かーわーいーいー!」
椎菜が琥珀にハグすると、彼女の耳元で何かを囁いた。
「んも、椎菜!
まだ私たちはそこまで……!
そもそも、痛い、って聞くし……」
「最初はね?
大きさにもよるけど、痛いよ?
ロストするには痛みもつきもの、ってことで!
これは理名にも言えるけど、大事なのは痛みも耐えられる信頼感と、後は勢いよ!
深月と美冬も経験者なんだし、彼女たちにも聞くといいと思うけど。
とにかく、深月たちへの報告はまだなんでしょ?
早く報告して、早く寝な?
身体冷えて風邪引いたら、巽くん心配するよ、きっと」
「そうそう。
多分、麗眞くん……には負けると思うけど、あんな感じで溺愛されるだろうし。
風邪引くと大変そう。
早く寝な?
おやすみ、琥珀。
良かったね!
両想いになれて」
琥珀は顔を真っ赤にしながら、そそくさと部屋から出て行った。
可愛かったな、琥珀。
恋すると、ああなるんだ。
ちょっと羨ましい。
「ねぇ、理名?」
水を何かの薬と一緒に含んだ後、一息ついた椎菜に話しかけられた。
この雰囲気は、かつて、初めて麗眞くんのお屋敷にお世話になった日とそっくりだ。
その当時を思い出して、何だか懐かしくなった。
「麗眞と、深月と秋山くんで話し合ったの。
班別自由行動とは言ってるけど。
私たちも深月たちも行くところはバラバラじゃない?
実質自由行動みたいなものじゃん、ってね。
ホテルを出た後に適当に写真でも撮っておけば、証拠になるし。
万が一迷っても、別荘に行けば無事なのは分かるし。
理名は、拓実くんと会ってくればいいんじゃないかな。
会いたいんでしょ?
彼に。
琥珀が心底羨ましい、って顔してるもん。
拓実くんも、きっと1日でも早く理名に会いたいはずだよ」
そうなのかな。
会えるなら、嬉しいし、素直に会いたい。
別れ際のあんなキスだけじゃ、会えなかった数ヶ月は寂しすぎた。
「別に、その通りにしろとは言わないから、考えてみて。
私は、そろそろ寝るね。
理名、おやすみ」
彼女はそう言って、あっという間に夢の世界へ堕ちて行った。
寝るの、早いな……
椎菜におやすみと返したものの、私はなかなか寝付けなかった。