ビターチョコ
拓実は一旦私の身体を離してから、耳元で彼は優しい声音で告げた。
「壁厚いわけじゃなくてむしろ薄いんだよね。
理名の可愛い声、他の奴らに絶対聞かせたくない。
ってことで、高沢さんに頼んで別荘連れて行ってもらおうか。
理名も、そのほうが初めて貰うの、集中できるでしょ」
もう、何て台詞を耳元で言うんだ。
顔が熱でもあるんじゃないか、ってくらい真っ赤で、上手く言葉が出てこない。
何より、久しぶりに聞く彼の低い声に、私の心臓は高鳴りっぱなしだった。
「拓実と別荘、行きたいな。
離れてた分、少しでも埋めたい。
離れても寂しくないように、してくれる?」
「可愛い姫の頼みなら、喜んで。
すみません、高沢さん、お願いできますか?」
学園の公認カップルの片割れ、麗眞くんの家で受けそうなお姫様扱いは、少しくすぐったかった。
高沢さんは、現在医学生で、4年生らしい。
本格的に国家試験の勉強に入る前に、医学生にとって憧れの地に足を踏み入れたかったそうだ。
自分の糧にしたかったのだという。
大先輩だ……
そんな人に優しくしてもらっているのが、何だか申し訳なく感じてくる。
「岩崎……というと、鞠子さんの娘さんかな?
目の辺りが彼女にそっくりだ。
彼女と、もう一人の女医さんに憧れて医学の世界に行こう、って決めたんだ。
成都輪生大学なら私のいる大学だから、何か困ったら連絡してくれ。
力になるよ。
君なら、いい医者になれる。
保証するよ」
車中でまさかの志望大学の在学生に会うなんて、と思っていると、車は停まった。
「恋人らしく、楽しんで来るといい。
連絡をくれたら、迎えに行くよ。
何なら理名ちゃんのいるホテルまで送る。
未来の後輩に、何かあったら困るからね」
高沢さんはそう言い残して、車を走らせた。
別荘の中は、麗眞くんのお屋敷と言われても疑わないくらい、荘厳な作りだった。
皆で食卓を囲めるテーブルに、何部屋かあるうちの1つがすごくシックな寝室になっている。
アンティークのライトと、アンティークなクッション。
窓から入る明るい光が、またいい感じだ。
「ここを使っていいみたい。
長旅で疲れたろ。
少し腰を落ち着けるといいよ」
彼はそう言いながら、手際よく窓にあるカーテンを隙間なく閉めていった。
何気ないその行為が、これから私と拓実が何をするつもりなのかを思い知らせてくれる。
少しまったりしようか、とベッドの端に座った拓実と隣に、そっと腰をおろした。
「良かったよ、理名が元気そうで」
そう言って微笑んでくれる彼に、とてつもない安心感を覚えた。
そのはずなのに。
これから何をするのか、予感があるからなのだろうか。
経験したことのない未知の体験への恐怖に、少しだけ緊張した顔で拓実を見上げた。
「……理名」
拓実は一言、私の名前を呼ぶと、ごく優しい力で抱きしめた。
「少し身体が震えてる。
怖い?
無理しなくていい。
こうして理名と話せるだけで、隣に理名がいるだけで、俺は幸せだからさ。
覚悟ができたときに、ちゃんと貰うから、そのつもりでいて?
俺はその時を、ずっと待ってるから。
長旅で疲れてるのに、変に緊張させて悪かったね。
少し寝ているといい」
そう言われれば、何だか頭が重いし、時々痛む。
慣れない環境に疲れが出たのだろうと思い、お言葉に甘えて少し眠ることにした。
「壁厚いわけじゃなくてむしろ薄いんだよね。
理名の可愛い声、他の奴らに絶対聞かせたくない。
ってことで、高沢さんに頼んで別荘連れて行ってもらおうか。
理名も、そのほうが初めて貰うの、集中できるでしょ」
もう、何て台詞を耳元で言うんだ。
顔が熱でもあるんじゃないか、ってくらい真っ赤で、上手く言葉が出てこない。
何より、久しぶりに聞く彼の低い声に、私の心臓は高鳴りっぱなしだった。
「拓実と別荘、行きたいな。
離れてた分、少しでも埋めたい。
離れても寂しくないように、してくれる?」
「可愛い姫の頼みなら、喜んで。
すみません、高沢さん、お願いできますか?」
学園の公認カップルの片割れ、麗眞くんの家で受けそうなお姫様扱いは、少しくすぐったかった。
高沢さんは、現在医学生で、4年生らしい。
本格的に国家試験の勉強に入る前に、医学生にとって憧れの地に足を踏み入れたかったそうだ。
自分の糧にしたかったのだという。
大先輩だ……
そんな人に優しくしてもらっているのが、何だか申し訳なく感じてくる。
「岩崎……というと、鞠子さんの娘さんかな?
目の辺りが彼女にそっくりだ。
彼女と、もう一人の女医さんに憧れて医学の世界に行こう、って決めたんだ。
成都輪生大学なら私のいる大学だから、何か困ったら連絡してくれ。
力になるよ。
君なら、いい医者になれる。
保証するよ」
車中でまさかの志望大学の在学生に会うなんて、と思っていると、車は停まった。
「恋人らしく、楽しんで来るといい。
連絡をくれたら、迎えに行くよ。
何なら理名ちゃんのいるホテルまで送る。
未来の後輩に、何かあったら困るからね」
高沢さんはそう言い残して、車を走らせた。
別荘の中は、麗眞くんのお屋敷と言われても疑わないくらい、荘厳な作りだった。
皆で食卓を囲めるテーブルに、何部屋かあるうちの1つがすごくシックな寝室になっている。
アンティークのライトと、アンティークなクッション。
窓から入る明るい光が、またいい感じだ。
「ここを使っていいみたい。
長旅で疲れたろ。
少し腰を落ち着けるといいよ」
彼はそう言いながら、手際よく窓にあるカーテンを隙間なく閉めていった。
何気ないその行為が、これから私と拓実が何をするつもりなのかを思い知らせてくれる。
少しまったりしようか、とベッドの端に座った拓実と隣に、そっと腰をおろした。
「良かったよ、理名が元気そうで」
そう言って微笑んでくれる彼に、とてつもない安心感を覚えた。
そのはずなのに。
これから何をするのか、予感があるからなのだろうか。
経験したことのない未知の体験への恐怖に、少しだけ緊張した顔で拓実を見上げた。
「……理名」
拓実は一言、私の名前を呼ぶと、ごく優しい力で抱きしめた。
「少し身体が震えてる。
怖い?
無理しなくていい。
こうして理名と話せるだけで、隣に理名がいるだけで、俺は幸せだからさ。
覚悟ができたときに、ちゃんと貰うから、そのつもりでいて?
俺はその時を、ずっと待ってるから。
長旅で疲れてるのに、変に緊張させて悪かったね。
少し寝ているといい」
そう言われれば、何だか頭が重いし、時々痛む。
慣れない環境に疲れが出たのだろうと思い、お言葉に甘えて少し眠ることにした。