ビターチョコ
皆、続々と進路が決まっていく。
琥珀は、このメンツの中で一番早く推薦枠での進学を決めた。
桜華大学音楽学科に進学し、音楽教師となる道を選ぶという。
琥珀なら、いい教師になりそうだ。
美冬と小野寺くん。
2人は、同じ明静大学 広報メディア学科に進学するという。
ミスコンとか開催になって、美冬に惚れるやつが出てくるのも困るからというのが理由のようだ。
深月と秋山くん。
深月は、自らの母親が非常勤講師となっている、希晶大学 医学科医学科 メンタルコース課程への進学が決定した。
秋山くんは、翠真大学 臨床心理学科へ進学するらしい。
深月が通う大学から近いのだという。
深月が実習だの、レポートだので缶詰になることは織り込み済みらしい。
彼女を拾って家に帰せるように、先月から教習所に通って車の免許取得を目指しているのだそうだ。
愛されてるねぇ、深月。
椎菜は、実習が充実している泰名大学 獣医学部 獣医学科に合格した。
畜産実習では、ちょっとした旅行気分も味わえるのだという。
それぞれ推薦入試で第一志望の大学にあっさりと合格していた。
私も、一度不合格にはなったものの、繰上げ合格にて、無事に憧れの成都輪生大学への入学を決めた。
面接をしていた教授が、私の面接が終わった直後に倒れた。
心臓マッサージを施し、AEDを持ってこさせたことは関係ないだろう。
さすがにそう思いたい。
「その咄嗟の行動は、紙の上の文字より、如実に理名っていう人間を垣間見たんじゃないかしら。
非常時こそ、その人の素が見えるものよ」
深月はそう言っていた。
彼女の言葉に妙に納得できる部分もあったので、素直に頷いて、合格を喜んだ。
深月の代で、生徒会は学園を改革したようだ。
中でも、2つの大きな成果を残した。
酷暑には外での部活動禁止、酷暑の日は日傘、帽子OK、水分補給も随時可、異装届けの提出の簡素化だ。
これには、主に女子生徒から喜びの声が多く聞かれたという。
ある日、琥珀の首筋に、絆創膏が貼ってあった。
それを目ざとく見つけた深月は、意味ありげに微笑んで、それを剥がした。
「もう!
優弥に、バージン奪われる寸前くらいだったけど、卒業するまで待って、って言って日和っちゃった。
その前に、ストレス解消に、ってバッティングセンター行ったんだけど。
優弥、ドン引きしてたんだよね……
何でだろ」
「実力を見込まれて海の向こう、アメリカのリーグで活躍した歴代日本人投手の球を普通にホームランの軌道にするやつがあるかよ……
ストラックアウトも、直球だけじゃなくてフォークやカーブ球も、いとも簡単に投げてたしな。
経験者涙目だぞ。
誰に似たのやら」
噂をすれば何とやら。
巽くんがいつの間にか来ていた。
教職を取るためのサポートがしっかりしている大生大学に合格したことをさり気なく告げたのだった。
今のところは、体育教師を目指すらしい。
琥珀とは、教員を目指すカップル同士になるわけか。
教員同士とはいえ、同じ学校になることは奇跡に近い。
まだ他人のままならいいが、籍を入れて夫婦になってしまうと、かなり難しくなるだろう。
この2人は、結婚まで大分掛かりそうだな……