●全力妄想少年●
「ホステスの会社に行けば彼女に会えるかな!?」


気分はすっかり正義の味方。
そんな希望に満ちた僕の質問を、鈴木さんは鼻であしらった。


「ばかね、ホステスの会社は日本中に山ほどあるのよ」


その言葉にがっくりと肩を落とす僕に呆れた様子を見せながらも、鈴木さんは話しを続ける。


「男がウジウジしないでよ。頑張って他の手がかりを思い出してみて!」


手がかり…。


彼女と一緒に過ごした、あのわずかな時間を、一秒一秒正確に辿っていく。
長い黒髪。
僕を見つめる瞳。
優しく語りかけた、甘い声。


「あ…!」


「思い出した!?」


鈴木さんが机ごと勢い良く身をのりだした。


「音楽――…」


「音楽?」


そうだ、彼女が僕に語りかけたとき、イヤホンから音楽が聴こえてきたんだ……。


あの音楽が何の曲か分かれば、もう一度、彼女に会えるかもしれない。
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