●全力妄想少年●
その日僕は生きもの係の当番で、鶏に餌をあげるために朝早く登校しなければならなかった。


しかもそれは、よりによって僕の誕生日。
朝目覚めたときは、10歳になった喜びよりも、鶏のために早起きしなければいけない憂うつの方が大きかった。


生きもの係は月に1回自分に回ってくるから、1年あたり合計で12回。

1年は365日で
誕生日はそのうちの1日。


誕生日に生きもの係が回ってくる確率はいくらだろう。



昨夜お姉ちゃんに少し教えてもらった「確率」のことを考えながら、いつもの通学路を歩いて行く。

そんなこと考えて登校する小学生って全国みても僕だけじゃないかって思うと、自然と顔がにやけてきた。

ニヤニヤ。
ニヤニヤ。


ここまでは、何の変哲もないいつもの事。


異変に気付いたのは、家から5分程度の距離にある交差点にさしかかろうとした時だった。

交差点手前にある、隣のクラスの中西さん家。
その前のゴミ収集場に、一人の女性がうずくまっていたのだ。
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