●全力妄想少年●
興味本位で静かに近付いてみると、女の人はゴミ袋を枕みたいに抱えて、気持ち良さそうに眠っているのが分かった。


微かにお酒の匂いがする。


長い黒髪が顔半分を覆っていたせいで、顔はよく見えなかったけれど、おそらく年は25歳くらい。

靴は片方履いていないし、ただでさえ短めのスカートが上の方までめくれている。
キャミソール(この言葉も後で鈴木さんが教えてくれた)の肩ひもも、だらしなくずり下がっていた。


先週お姉ちゃんが同じような服を着て、お母さんに
「そんな下品な格好をしていけません」
と怒られていたのを思い出し、下品の意味は分からなかったけれで、この人は危険な人なんだ、すぐにこの場所を離れなければ、と僕は思った。


だけどその日は梅雨の中休みの時期で、まだ朝は肌寒い。
こんなところで寝てると風邪引くんじゃないかと、僕は段々心配になってきてしまった。



(僕は女子に対して優しいのだ。
鈴木さんは「小林くんは、いつか女にだまされるわね」と言うけれど。)
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