●全力妄想少年●
「あの、風邪ひきますよ」

僕はドキドキしながら声をかけたが、女性は相変わらず幸せそうに眠ったままだった。


「あの…」


今度は肩をぽんぽんと叩いてみた。
お母さんと違って、肌が凄くしっとりしていることに驚いた。
こんなにツルツルな肌だから、肩ひもが下がっちゃうのかなと僕は思った。


「すいません!」


今度は大きな声で叫んでみたがそれでも全然効果がなかったので、
僕はランドセルからリコーダーを取り出し、ちょうど昨日習ったばかりの「高いレ」を思い切り吹いてみた。


朝の静寂を切り裂くように鳴り響く「高いレ」。

その音に電線の上にいた雀達がびっくりして一斉に飛んでいったのと同時に、彼女は「う…ん…」と呟きながら、目をゆっくりと開いた。
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