●全力妄想少年●
しまった。
これでは、見た目は完全に、食欲旺盛だけが取り柄の無邪気な小学4年生。

その裏で、愛に関する哲学的思考を行っているなんて一体誰が想像できるだろうか?



「…もういらない」


しんみりとした口調でそう言い、箸をカタリとテーブルに置いた。


少し悩ましげに。

少し影を漂わせながら。



「そりゃ、それだけ食べればね」


そんな僕の小芝居を嘲笑うかのように、お姉ちゃんは遠慮なく笑う。


「小学生は気楽そうでいいね。それに比べて高校は大変だよ、嫌になっちゃう」


その言葉に、今まで黙ってやり取りを聞いていたお母さんが、


「お姉ちゃん、何か学校であったの?」


と心配そうに尋ね、そこからお姉ちゃんのたわいもない(と僕は思う)クラスメイトとの不和の話しが始まった。


完全に居場所のなくなった僕は、黙って自分の部屋へと帰った。
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