●全力妄想少年●
「……なに?」


彼女がとろんとした目で、だるそうに長い髪をかきあげた瞬間、僕の体はその場に固まった。


その顔は、僕の10年間という長い人生の中で、見たことがないほどの美しさだった。


鼻はすらりと高く、
目は綺麗な奥二重(これも鈴木さんが教えてくれた言葉)。
そして髪と同じ、漆黒の瞳。
シャンプーのCMに出れるんじゃ、と思うほど綺麗な和風の顔だ。


「…あ…風邪…ひいちゃいま……す」


緊張を振りほどいてようやく出せたのは、情けないほどにか細い声だった。


彼女は辺りをゆっくりと見渡し、ようやく状況が呑み込めたようで

「ああ……またやっちゃったなあ」

と小さく呟いた。
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