深海のマリア
「皆に紹介するぞ。今日からこのクラスの一員になる、三条柚希君だ」
教師の紹介で足を踏み入れた。
汚れている窓に、落書きだらけの壁。清潔とは言い難い教室だ。
「よろしくお願いします」
それだけ言うと、教師が指示した席に向かう。席に着くと、男子生徒が身を乗り出して話しかけてきた。
「なあ、お前東京から来たんだろ?なんか、髪とか染めてんのそれ?家どこらへん?」
「家は、槽山の方。髪は地毛だけど」
「柚希まだ村の事知らないだろ?後で案内するぜ!なあ、なんで都会から、こんな辺鄙な所に引っ越して来たんだ?」
質問が多すぎる、なんか馴れ馴れしいし。あまり相手にしたくないタイプだ。
「・・・。」
「なあ、柚希ってさ・・・」
「何?」
「もしかしてさ、やっぱ、『両性』だったりすんの?」
次にこの質問がくることはなんとなく分かっていた。
「そうだよ」
俺が答えると、男子生徒は言葉につまる。
そんな反応も、もう慣れていた。