深海のマリア



「両性」とは、数年前くらいから増えた、人間の新たな成長生態だ。

例としては、男性がある日突然男性器が消え、新たに女性器がつくられたり、男性の性器も女性の性器もある人物の事が挙げられる。

俺は、後者の形態で、明確な性別はまだ決まっていない。戸籍上は男だが、思考次第では前者のように、男性器が消えたり、逆に女性器が無くなることもあるらしい。


つまり、両性が男を好きになれば女に、女を好きになれば男になる。

普通は10〜15と、早い段階で、自分が決めた「異性」を意識し、それに合わせて性別も決まるので、俺は比較的遅い方だ。


「柚希、今まで付き合った人居ないのか?」

「・・・居ないけど」

「っそ、そうか!」

男子生徒は突然頬を赤らめ、声を張った。

「俺、好摩銀次!銀次って呼んでくれよ」

「好摩じゃ駄目なのか」

「えっ」

「好摩って呼ぶよ」


名前呼びは、なんとなく嫌だったので辞退する。

様子を伺っていたクラスメイトが、「銀次がフられとる」と好摩をからかった。


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