白い海を辿って。

自宅に帰ると、仕事を終えた母が先に帰宅していた。



『どこか行ってたの?』

「うん、ちょっと買い物行ってた。」


いつも決まった時間に帰る私が少し遅くなったことを心配しているような、でも出かけていたことに関してはどこか嬉しそうな、そんな複雑な表情だった。


両親と兄と妹。

愛描のマンチカン、しずく。

近くに住む母方の祖父母。

それが私の家族。


小中高と野球に熱中し、成績も優秀で良い大学を出て大手企業に就職した24歳の兄。

人当たりも良く社交的で、きっと誰から見ても“良い息子”であり“良い兄”であり“良い部下”であり“良い先輩”なのだろうと思う。


明るく天真爛漫な妹は18歳の大学生で、バイトに大学に遊びに…と誰が見ても充実していると分かる日々を送っているようだ。


どこからどう見ても、我が家の問題は私だった。

大学の中退、その理由。

それでも今、家族は私にとても優しい。

家事を手伝っているからなのか、私のことを『明日実がいなきゃいけない』とまで言ってくれる。



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