白い海を辿って。
「わぁ、先生あれ見て!すごい!」
窓の外に目を向けていると遠くに光輝く景色が見えて、思わず声をあげる。
『今向かってるから、すぐ近くで見られるよ。』
「あれ何ですか?」
『それは着いてからのお楽しみ。』
楽しそうに笑う青井さんの横顔と、だんだん近くなる光。
自然とわくわくして笑顔がこぼれる。
『ほら、近いだろ?』
「すごい…。」
車を降りると、すぐ目の前は広い工場地帯だった。
こんな夜でも変わりなく動いていることを示す灯りと煙突から立ち昇る煙が、手前に流れる水面に浮かんでいる。
「ここ、海ですか?」
『ううん、川だよ。でも海みたいに広くて綺麗だろ。』
本当に、海みたいに広くて大きな川だった。
その対岸にある工場地帯のオレンジの照明が、沢山集まって夜景のように綺麗に光っている。
「ずっと見てられるな。」
『寒くない?』
秋も深まって、肌寒く感じる日もあった。
そんな私の背中に、青井さんがそっとジャケットをかけてくれた。