白い海を辿って。
『ごめんなさい。』
彼女のか細い声で我に返る。
「俺の方こそ、」
『少し驚いただけなので、先生は何も悪くなくて…』
まただ。
先生と呼ばれたことにまた距離を感じて、だけどどうしても一歩を踏み出すことができない。
「今日は帰ろうか。」
そうした方がいい気がして言ったけれど、彼女は予想外にショックを受けた顔をした。
いつまでも見てられるな、と言った柔らかい表情を思い出す。
目の前には綺麗なオレンジの光とゆるやかな川が広がっている。
「本当はもっと一緒にいたいけど、無理はさせたくないから。」
この景色を一緒に見たくて連れて来た。
いつもとは雰囲気の違う、可愛い服を着てきてくれて嬉しかった。
美味しそうにご飯を食べてごちそうさまでしたと言ってくれた笑顔も、綺麗と言った初めて見る無邪気な笑顔も、知れば知る程どんどん惹かれていく。
本当はもっと一緒にいたい。
帰したくなんかない。