白い海を辿って。
だからきっと、私は愛されている。
体調を壊して出かけられなくても、ここに居場所がある。
だけど、愛されていると実感する度に私の孤独は増していく。
誰にも言えない、どうしようもない孤独。
父は料理や掃除が得意で、とても家族想いな“理想の父親”のお手本のような人だ。
そんな父の優しさに守られて生きる母は明るく自由な行動派。
きっと周りから見れば至って普通の家族。
でも私にとってはたったひとつの、かけがえのない特別な家族。
「しずく、ただいま。」
いつものように私を出迎えてくれるしずくの頭をなでていると、ふと先生を思い出した。
さっきまで隣にいた先生。
にこにこと笑って話してくれた先生。
私のことを覚えていてくれた先生。
もう会えないかもしれない先生。
次に繋がる何かが欲しいと思ったけれど、自分で自分に怯えて逃げ出したせいで何も得られずに帰って来てしまった。
しずくに似ている気がする先生。
優しく目を見て話してくれる先生。
指輪をしていなかった先生。
なぜだろう、考えるのは先生のことばかりだ。