白い海を辿って。
『今日って教習所は休みじゃないですよね?』
「うん、でも普通に平日の休みもあるよ。土日が休みになることもあるし。もしかして休所日しか休みないと思ってた?」
『そっか、そうですよね。』
よく大変な仕事だと言われるが普通に休みもあるし、基本残業がない。
免許を取る前の人が運転する車に乗るのは怖いけれど、そこは生徒を信頼するしかない。
「なんで水族館に行きたかったの?」
『ペンギンの本を読んでいたら会ってみたくなって。だからテレビで見てた水族館に行けるなんて夢みたいです。』
見たくなってじゃなくて会ってみたくなってと言ったことに頬が緩む。
「暑くない?」
暖房が効いている車内で少し腕まくりをした彼女に聞く。
遠慮がちに座る様子から言い出せないでいるのかと思った。
『すいません、大丈夫です。』
「謝らなくていいのに。」
彼女は口癖のようにすぐ謝る。
そんなに謝らなくたって、怒ったりしないのに。
信号が赤になって彼女を見ると、困ったように微笑んで窓の外に目を向けた。
こんなに傍にいるのに、やっぱり彼女はどこか遠かった。