白い海を辿って。
『持ってるよ。』
「すいません。」
寒いかもと一応着てきたけれど、館内は人の混雑もあってコートを着るほどではなかった。
青井さんはパーカー姿で、私も車に置いてくれば良かったと後悔する。
『もうすぐペンギンだよ。』
だけど青井さんは何も気にしていないように笑って先に歩き出す。
その手を、とっさに掴んでいた。
『え?』
「手、繋いでてもいいですか…?」
素直にそう思っていた。
青井さんと手を繋いで、安心しておきたかった。
『いいよ。俺も繋ぎたいと思ってた。』
軽く掴んでいた私の手をぎゅっと握って、青井さんが笑う。
その笑顔の優しさと大きな手の温もりにほっとする。
急に触ったりなんかしてごめんと謝らせてしまったことが、ずっと私の中で引っかかっていた。
普通でいたかったのに。
本当にそう思っていた。
だけど青井さんはこんな私でもきっと突き放したりなんかしないと、今なら思うことができる。