白い海を辿って。

『すご!ペンギンに囲まれてる!』


ペンギンのトンネルを歩いていると、上下左右あちらこちらにペンギンが泳いでいる。

キョロキョロしながらはしゃぐ青井さんがなんだか可愛くて、自然と笑顔になる。



「気持ちよさそうだなぁ。」

『意外とお腹がぽこぽこしてて可愛いな。』


優雅に泳ぐペンギンを立ち止まって見ていると、あちらこちらからはしゃぐ声が聞こえる。

観光客らしき団体がわっとやってきて、私たちの後ろを通り過ぎた。


決して広くはないトンネルの端に追いやられた私を、青井さんが覆い隠すように包み込む。

体には触れずに水槽に手をついて、私の視界を青井さんだけにする。


もう声なんて聞こえなかった。

自分の鼓動があまりにも速く鳴っていて。


それでも私1人くらい簡単におさまるその広い腕の中は、守られているという安心感に満ちていた。



『行こうか。』


団体客が通り過ぎてしまうと青井さんはまた何事もなかったように笑って、もう1度手を握り直してくれる。

さっきよりもぎゅっと力を込めて握り返したことに、青井さんは気付いてくれただろうか。



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