白い海を辿って。
『あぁ、満喫したなー。』
「イルカもアザラシも可愛かったですね。」
隅から隅まで水族館を楽しんで外に出ると、青井さんがぐっと伸びをする。
それでも手は繋がれたままで、その手はとても温かかった。
『はい、これ。』
「すいません。ずっと持ってもらっちゃって。」
青井さんが片手に持っていた私のコートをそっと着せようとしてくれる。
照れくさかったけれど袖を通してもらうと、不意に低いトーンで言われた。
『滝本さんは何でもすぐに謝りすぎだよ。』
「え?」
無意識だった。
自分がそんなに何度も謝っていたことに気付きもしていなかった。
『滝本さんは謝らなきゃいけないことなんて何もしてない。だから俺は、ありがとうって言ってくれた方が嬉しい。』
私の後ろに立っているから、青井さんの顔は見えない。
だけど頭ふたつ分ほど高いところから降ってくる声から、その真剣さが伝わってくる。