白い海を辿って。
『あ〜緊張した。』
心から嬉しそうにくしゃっと笑う姿を見て、もう1度抱きつく。
ずっと遠い人だと思っていた。
実際教習所へ通っていた頃はそこまで親しくなれなかった。
だけど青井さんは私を覚えてくれていた。
迎えに、来てくれた。
『どうした?』
「なんでもない。」
ぐっと腕の力を強くした私の頭に手を置きながら青井さんが聞く。
こうすることに理由なんてなかった。
ただ嬉しくて愛おしい、それだけだ。
『ねぇ、明日実って呼んでいい?』
「え?」
『明日実。』
顔を上げると私を見下ろす青井さんと目が合う。
そうして名前を呼ばれると嫌だなんて言えなかったし、思わなかった。
「じゃあ私は、遥太さん。」
『さん?』
「はる…くん?」
『それで。』
思いもしないところからやってきた恋は、まだ始まったばかりで。
この恋を大切に大切に育てていきたいと、心からそう思っていた。