白い海を辿って。
あの子はとても真っ白な子だった。
冴えない俺とは何もかもが違う、純粋で心が綺麗な女の子。
滝本さん。
名前は確か、明日実さん。
3ヶ月程前に教習所に通っていた彼女は、学生ではないと言っていた記憶がある。
ということは22、3歳くらいか?
親しくなりすぎない為に、生徒のことは必ずさん付けで呼ぶようにと決まっている。
男子生徒と仲良くなることには何の問題もないが、ごく稀に教官に恋愛感情を持つ女子生徒がいたりするからだ。
それに関して俺は例外だけれど。
滝本さんは今時の若者にしてははしゃぎすぎないところがあって、間違えても『ヤバイ』や『マジで』などとは言わない綺麗な言葉遣いが印象的だった。
ミディアム丈の黒髪をいつも軽く内巻きにしていて、清楚や上品という言葉がよく似合う。
思い出がそんなに沢山あるわけではないけれど、こんなにも世間に染まらない子がいるのだなと思った記憶がある。
滝本さんと再会して、その顔も名前もハッキリと覚えていた自分に驚いた。