白い海を辿って。
『普通はちょっと通っただけの生徒なんて覚えてないし、卒業したことにすら気付かない生徒がほとんどなんだ。でも明日実を見かけなくなったとき、もう会えないのかなって思うとすごい残念でさ。』
「そうだったんだ。」
私はまだ、彼のことを何も知らなかった。
そして彼もまた、私のことをまだ何も知らない。
『すぐじゃなくていいからさ、いつか明日実の話も聞かせてよ。』
「うん。」
いつか話せる日は来るだろうかと思い、前にもこんなことを思ったことに気付く。
彼と再会して以来、私たちの間で理瀬先生の話が出ることはなかった。
先生とは、結局私のことを何も話せないまま会えなくなってしまった。
「今日は本当にありがとう。」
『ゆっくり休みなよ。』
家まで送ってもらうと、辺りはもうすっかり夜だった。
遠くまで運転してもらって、ゆっくり休んでほしいのは彼の方だ。
「はるくん…もね。」
『うん。』
ぎこちなく言った私に彼はおかしそうに笑って、頭を優しくなでてくれた。