白い海を辿って。
1人になった自分の部屋で、机の上に買ってきたペンギンのぬいぐるみを置く。
さっき彼がしてくれたようにぽんと頭をたたき、寝る前にもう1度ありがとうとLINEしようと思う。
「え…?」
そういえばしばらくスマホを見ていないなと思いバッグの中から取り出して、思わず声が漏れた。
画面に“理瀬先生”と表示されていたから。
どうして、今…?
『元気にしていますか?』
たった一言、そう書かれただけのLINE。
会いたいとも会おうとも書かれていない文面からは先生の気持ちを読み取ることができない。
先生から連絡が来ることはもうないと思っていた。
待ってると言ったのは私で、会いたくなったら連絡してもいいですかと言ったのも私だ。
だけど私から連絡しなかったのは、会いたいと言ったとしても先生は応えてくれないだろうと思ったから。
離婚してから先の約束をできなくなってしまった先生と、何の不安もなく一緒にいられる自信が私になかったのかもしれない。
だけど何よりも私の中で大きかったのは、俺はいなくなったりしないと言ってくれた彼の言葉だった。