白い海を辿って。

話さなきゃいけない。

いや、話したい。


関係が確立されてから話すよりも、始まるときに話さないと意味がないと思った。

これから付き合っていくのに、隠し事はしたくない。

彼ならきっと全部受け入れてくれるはずだと、そう信じて。



『こんばんは。』

「こんばんは。」


次に彼に会えたのは、水族館へ行ってから1週間後。

彼の仕事が終わってから一緒に食事へ行くことになった。



「あの、お願いがあって…。」

『うん?』

「あの場所に行きたいの。」


初めて食事へ行った後、彼が連れて行ってくれたオレンジの照明が綺麗な川辺。

そこで話そうと決めていた。



『寒いけどいいの?』

「大丈夫。」


あの場所がどこなのかすぐに分かった彼の声は少し心配気だった。

緊張で私の口数が少なくなっていることに気付いているのかもしれない。


何から話そう、何て言われるかな。

考え出したらキリがない。



< 133 / 372 >

この作品をシェア

pagetop