白い海を辿って。

『俺から話してもいい?』

「うん。」


ベンチに並んで座ると、彼が静かに話し始めた。



『単刀直入に言う。明日実が理瀬さんとどういう関係だったのか教えてほしいんだ。』

「え…先生と…?」


想像していなかった名前が突然出てきて驚く。

先生とのことは前に話したような気がして思い出そうとするけれど、ごまかした記憶しか出てこなかった。



『ちょっと仲良くしてただけだって言ってたよな?それを信じてないわけじゃないんだけど、仲良くってどの程度だったのかなって。』

「それは…本当に何もなくて。」


ただ1度2人で出かけて、何度か話をした。

本当にそれだけ。


だけどそこにどれほどの想いがあったかは、うまく言葉にすることができない。

先生が離婚をしたことによって抱いた傷も、後悔も、私の口から話すことはしたくない。



『何も?』

「何も…。」


水が流れる静かな音だけが聞こえる。

何もなかったと分かってほしいのに、何もなかったと言うことに寂しさを感じる自分に戸惑っていた。



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