白い海を辿って。

何も言ってあげられる言葉が出ず、ただその小さな体を抱きしめる。

壊れてしまわないように、大切に、大切に。



「ごめんな…つらいこと聞いて。もう大丈夫だから。俺がいるから。」


バカみたいに途切れ途切れで、だけどとにかく伝えたくて。



「俺なら絶対そんな想いはさせない。ずっと明日実を守る。だからもう大丈夫だ。」

『はるくん…』


ぎゅっとしがみついてくる腕の強さに、彼女の不安を感じとる。

普通でいたかった。

面倒だと思われたんじゃないか。

初めてここへ来たときに彼女が言った言葉を思い出す。


ずっとひとりで抱えながら、ずっと“大丈夫”を装ってきたのだろう。



「俺は、いなくなったりしないから。」


あのとき言った言葉をもう1度伝える。

俺はいなくなったりしない。

彼女の全てを受け入れて、彼女が本当に大丈夫と言えるまでずっと傍にいる。


誰にも渡したくない。

もう誰にも、触れさせたくない。



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