白い海を辿って。
『仕事の悩みじゃなさそうだな。』
注文を終えて店員が去ったのを見計らって早見先生が聞く。
普段からよく後輩のことに目を向けていて、些細なことにも敏感に気付いてくれる人だ。
「はい。…滝本さんのことです。」
『あぁ。前に少し聞いたな。』
「俺たち今付き合ってます。」
『へぇ…そうなのか。』
ウーロン茶を飲む手を止めて分かりやすく驚いた顔をする早見先生に、何から切り出そうか迷う。
彼女がいないところで、どこまで彼女の話をしていいのだろうか。
『そうか。驚いたな。』
「早見先生は、彼女が教習所へ通っていた頃によく気にかけてくれてましたよね。」
『それはそうだけど。入所にあたって滝本さんのお母さんが相談に来て、それに対応したのが俺だったってだけで。具体的なことは、何も。』
注文した料理が運ばれてきて、一旦話が中断する。
だけど湯気をあげる料理には2人とも手を伸ばさない。