白い海を辿って。

「相談って、どういう…?」

『俺から話してもいいのかな。』

「俺は、全部聞きました。彼女がどんな経験をしたのか。でも…俺が何をしてあげればいいのか分からなくて…。」


普通に接することが1番なのは分かっている。

何もなかったように、今まで通り過ごすことが。

だけどふとした瞬間に思い出させてしまうようなことをしてしまうかもしれないと思うと怖かった。

初めて頭に手を置いた、あのときのように。



『そうか…話したのか。滝本さんは青井くんに。』


何かを考え込むように黙った早見先生に、真剣なんだなと聞かれたあの日の声がよみがえる。



『薬を飲んでいても、教習所に入れてもらえますかと聞かれたんだ。』


彼女が眠れない日と、不安になってしまうときに飲んでいる薬。

今もまだ、ほぼ毎日。



『薬によっては服用後に運転してはいけないものもあるから、どんな薬ですかって聞いたら精神科のものだと。』


そんなに強い薬ではないことは彼女からも聞いていたけれど、それに頼らなければならないほど弱っていた彼女を思うとまた胸が痛む。



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