白い海を辿って。

『所長と相談して他の教官にはそのことは言わなかった。滝本さんはよく頑張ってたし、何かあれば俺がフォローしようと思ってたから。』


早見先生が彼女を気にかけていることには気付いていた。

それは俺が彼女を目で追っていたということで。

そんな彼女への想いにまだ気付いていない頃、早見先生は陰で彼女のことを支えていた。




『教習所にはいろんな人が来るよ。次から次へと入っては卒業していく。1人1人を全員覚えてるかって言われたらほとんど覚えてない。だけど、滝本さんのことは今でもよく覚えてるんだ。』


俺が覚えていたのとは、きっと全然違う理由だ。

何も知らないまま、可愛いなんて思っていた自分が恥ずかしい。



『大丈夫ですかって聞いても大丈夫だと答えるし、何か不安なことないですかって聞いてもないと答える。でもな、1度だけ滝本さんが泣いたことがあった。』

「え…。」


当たり前だけど、何も知らなかった。



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