白い海を辿って。

『他の教習生と3人で乗ってたとき、教習が終わって車から降りた彼女がロビーへ戻ろうとしなくて。どうしたのかなって思ったら、背を向けて1人で泣いてたんだ。』

「なんで…?」

『一緒に受けてた2人とも男だった。俺も含めて狭い車内に男が3人。ずっと怖かったのかもしれない。』


早見先生がいてくれて良かったと思う。

そのときの彼女が1人じゃなくて、本当に良かったと思う。



『何も気付けなかったよ。車内に2人の方が怖いとばかり思ってたから。泣いてる滝本さんを見ても、本当に何もできなかった。』


つい昨日のことのように話しながら後悔の表情を浮かべる早見先生の優しさが、まっすぐ胸に刺さる。



『すみませんってずっと謝るから、謝らなくていいんだよって言うんだけどそれでもまた謝って。自分がフォローすればいいなんて思っておきながら情けなかったよ。』


すぐに謝る癖は、いつからついたのだろう。

彼女が何も悪くないことを、俺も早見先生も分かっている。



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