白い海を辿って。
『たまらなかった。何があったんだろうって思ったらさ。俺にも娘がいるから、こんな風に娘が傷つけられたらどんな気持ちだろうって。』
娘さんに重ねる早見先生の胸の痛みが俺にも伝わってくる。
ずっと誰にも言わず、だけど1人の教官として心に残っている出来事だったのかもしれない。
「ありがとうございました。彼女のこと、いろいろ良くしてくださって。」
『いや、だから俺は何も…』
「早見先生が気にかけてくださっていただけで、彼女は救われていたと思います。俺は本当に、そのときはまだ何も知らなかったので。」
何も知らなかった悔しさと、そのとき傍にいられなかった悔しさ。
だけどそのとき早見先生がいてくれたことは、やっぱりとてもありがたいことだった。
『俺が見ていたのなんてほんの一時だけだ。だから今一緒にいる青井くんの方がずっと救いになってるんじゃないか。』
「なれてるんでしょうか…。」
本当に、ただ傍にいることしかできない俺が。