白い海を辿って。
「普通でいたかったって言ったんです。」
『え?』
「面倒だと思われたくないって。だからずっと自分を隠して大丈夫なふりをしてきたんだと思います。」
こうして彼女の話ができる人がいてくれたことに、何よりも俺が救われていた。
「彼女が強がらずに頼れる存在に、俺はなれるんでしょうか…。」
『なるしかないだろ。青井くんしかいないんだから。』
なるしかない。
彼女が当たり前のようにわがままを言ったりできるような存在に、俺がなるしかない。
『悪かった。』
「え?」
唐突に謝られ、とぼけた声が出た。
『本気なのかなんて、気持ち疑うようなこと聞いて。』
「いえ、そんなの全然。」
今までの俺は、気になる女性がいれば簡単に遊んで付き合ってきた。
軽いと思われるのも、疑われるのも仕方のないことだと分かっている。
「彼女のことは…彼女だけは、本当に真剣なので。だから信じて」
『充分だよ。』
信じてくださいと言い終わるよりも前に、早見先生が優しく言う。
その笑顔に、胸がすっと軽くなるのを感じた。