白い海を辿って。

『あら~ 爽やかイケメン!』

「ちょっとお母さん。」


玄関で自己紹介をした彼に母がはしゃいだ声をあげる。

その一言で彼を気に入ったことが分かるくらい弾んだ声だ。

その声を聞いた父と妹も出てきて、その度に彼がペコペコと頭を下げる。



『ありがとうございます。わざわざ来てくださって。』

『真面目にお付き合いしていると、1度きちんとご挨拶をと思っていたので。』


父と向かい合う彼を不思議な気持ちで見つめる。

こんな風に誰かを紹介する日が来るなんて思ってもいなかった。



『いい方じゃない。』


少し真剣なトーンになった母がしみじみと漏らす。

心配ばかりかけてきた家族を彼が安心させてくれたことが嬉しくて、自然と頬が緩む。



『明日は遅くならない内に送り届けますので。』

『ありがとう。またゆっくり遊びに来てね。』


家族に見送られて家を出ると、彼がふぅっと深呼吸する。

ようやく緊張がほどけたようだ。



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